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東京都台東区旅館業法施行条例の改正と民泊への影響

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東京都台東区は、平成28年3月29日、東京都台東区旅館業法施行条例改正案を可決し、同条例は、同年4月1日、施行されました。

改正の内容は、以下のとおりです(太字部分が今回の改正によって追加された内容です。)。

(営業者の遵守事項)
第6条 営業者は、次に掲げる事項を遵守しなければならない。
⑴ 客室の入口には、室番号又は室名を表示しておくこと。
⑵ 客室には、定員を表示した案内書、表示板等を備え付けること。
⑶ 玄関帳場及び客室には、宿泊料を表示した案内書、表示板等を備え付けること。
⑷ 営業施設には、営業従事者名簿を備え付け、規則で定める事項を記載しておくこと。
⑸ 営業施設には、適正な運営を行うため、営業時間中に営業従事者を常駐させること。

(簡易宿所営業の施設の構造設備の基準)
第9条 政令第1条第3項第7号に規定する条例で定める簡易宿所営業の施設の構造設備の基準は、次のとおりとする。
⑴ 宿泊者の利用しやすい位置に、宿泊者の履物を保管する設備を設けること。
⑵ 1客室の規則で定める構造部分の合計床面積は、3平方メートル以上であること。
⑶ 客室の規則で定める構造部分の合計延べ床面積は、政令第1条第3項第1号に規定する面積以上であること。
⑷ 階層式寝台を設ける場合は、2層とすること。
⑸ 多数人で共用しない客室を設ける場合には、その客室の延べ床面積は、総客室の延べ床面積の2分の1未満とすること。
⑹ 宿泊しようとする者との面接に適する玄関帳場その他これに類する設備を有すること。

「民泊サービス」のあり方に関する検討会では、民泊を、当面、旅館業法上の簡易宿所に位置づけて、旅館業法の許可取得を促進すべきとしています。
そして、検討会の中間整理を受けて、平成28年4月1日、旅館業法施行令の一部を改正する政令が施行され、簡易宿所の客室の延べ床面積基準が緩和されました。これによって、小規模な施設においても旅館業法の許可が取りやすくなることが期待されています。

しかし、台東区では、今回の条例改正によって、簡易宿所として営業許可を取得するには、営業従事者の常駐、玄関帳場等の設置が求められることになりましたので、区内においてワンルームマンション等の小規模施設で民泊を行うことは困難になります。
台東区は、国の規制緩和は、近隣の住民とのトラブル等を拡大させる恐れもあり、近隣住民の良好な生活環境の確保と宿泊者の安全確保が必要であると説明しています(※1)。

民泊については、衛生管理面、テロ対策、近隣住民とのトラブル防止などの問題が指摘されており,規制緩和することに慎重な意見もあります。
今後,同様の条例改正を行う地方自治体が出てくる可能性もあります。今後も、地方自治体の動きを注視していきたいと思います。

(平成28年4月1日)
※1 平成28年第1回定例会(3月29日 最終日)議員提出第3号議案「東京都台東区旅館業法施行条例の一部を改正する条例」 提案理由説明