弁護士・大城聡

お問合わせ・アクセス

トップ  >  社会問題への取り組み  >  コラム  >  マイナンバーカードとポイント、そして健康保険証

マイナンバーカードとポイント、そして健康保険証

コラム一覧

マイナンバー制度の鍵は、マイナンバーカード(個人番号カード)にあります。政府資料からわかったことをまとめてみました。

総務省が各種ポイントカードをマイナンバーカードに一本化できないか、検討を始めることにしたというニュースが出ました。
http://www.news24.jp/articles/2016/01/05/04319033.html

実は、民間のポイントカードとして利用できるように、マイナンバーカード(個人番号カード)のICチップの民間開放は当初から予定されていたことです。

各種ポイントカードを一元化するという発想はなかったので驚きましたが、今後もマイナンバー制度に関しては順次利用が拡大していくのが政府の方針です。

その方針が良くわかるのが、政府の広報資料の中にある「マイナンバー制度導入後のロードマップ(案)」です。
http://www.cas.go.jp/…/bangosei…/download/summary_zentai.pdf

内閣官房のホームページからダウンロードできる「一般の方向け」の広報資料の18頁にあります。
http://www.cas.go.jp/…/seisa…/bangoseido/kouhousiryoshu.html

ここでポイントとなるのは、マイナンバーカード(個人番号カード)です。
ロードマップ(案)には、次のような記載があります。

【2016年1月から】
国家公務員身分証一元化。地方公共団体・独法・国立大学法人・民間企業の社員証としての利用の検討も促す

【2016年1月以降順次】
各種免許等における公的資格確認機能を持たせることを検討

【2016年から順次】
公的個人認証・ICチップの民間開放、地方公共団体による独自利用

【2017年以降】
キャッシュカード・クレジットカードとしての利用の実現に向けて検討

【2017年7月目途】
医療保険のオンライン資格確認システム整備

【2017年7月から】
健康保険証としての利用

これは政府(内閣官房)が国民向けの広報資料に書かれていることです。
マイナンバーそれ自体の利用拡大には法改正が必要になるものが多いと思いますが、法改正の必要もロードマップ(案)に記載されています。一方、マイナンバーカード(個人番号カード)のICチップ利用拡大は政令で民間業者を含めて指定できるようになっています(マイナンバー法(正式名称:「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」)18条)。

このロードマップ(案)のもとになったと思われるのが、「マイナンバー制度利活用推進ロードマップ(案)」です。
https://www.kantei.go.jp/…/senmon_b…/number/dai9/siryou6.pdf

首相官邸IT総合戦略本部第9回マイナンバー等分科会(2015年5月20日)でふくだ内閣府大臣補佐官提出資料として出されたものです。これを便宜的に「ふくだ資料」といいます。
ふくだ資料では、「個人番号カード ICチップの活用⇒広がりは期待薄」としながらも、「個人番号カード 公的個人認証の活用⇒イノベーションの鍵」としています。「ワンカード化の促進」と「個人番号カードを健康保険証として利用」という流れを経て、「全国民が個人番号カードを保有できる」状況を構想しています。これを見るとマイナンバー制度の鍵は、個人番号カードにあることがよくわかります。

「健康保険証としての利用」が実現すると、全国民が個人番号カードを保有できるではなく、全国民が保有する社会が実現することになると考えられます。

なお、ふくだ資料では、「個人番号カードの交付に当たっては、厳格な本人確認を行う必要があることから、市町村職員の目視に加え、最新の顔認証システムを補助的に活用する」との記載があり、2020年には「個人番号カードもスマホも持たずに予め本人確認のうえ登録した生体情報で代用可能に!」として「オリンピック会場入館規制」にも活用すると記載されています。顔認証については、政府(内閣官房)の広報資料のロードマップ(案)には記載されていません。ただし、マイナンバー法は、マイナンバーカード(個人番号カード)は「本人の写真が表示」されるものだと定めています(マイナンバー法2条7項)。

ロイターは、「マイナンバー医療適用なら人権侵害の懸念=医師会常任理事」というインタビュー記事を掲載しています。

http://jp.reuters.com/…/interview-mynumber-idJPKCN0S107A201…
また、日本医師会 医療分野等 ID 導入に関する検討委員会の「中間とりまとめ」では、病歴や服薬履歴等、人によっては第三者に知られたくない情報や患者同意の上で集めている情報が存在する医療情報の連携等については、マイナンバーとは別の医療分野専用の番号もしくは符号(医療等ID)を創設し、利用すべきであるとしてます。
http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20150715_5.pdf

今後、マイナンバーカード(個人番号カード)がどのように取り扱われるのか、とりわけ全国民が所持する健康保険証として利用されるかどうかは、この制度の大きな争点になるはずです。