弁護士・大城聡

お問合わせ・アクセス

トップ  >  社会問題への取り組み  >  メディア  >  産経新聞「裁判員施行6年 「市民モニター」議論深めるきっかけに」(5月21日)

産経新聞「裁判員施行6年 「市民モニター」議論深めるきっかけに」(5月21日)

メディア一覧

裁判員ネットのフォーラム、市民モニターの活動を中心に取材していただきました。

(産経ニュースより)

裁判員施行6年 「市民モニター」議論深めるきっかけに

国民が裁判員裁判を考える機会にと、弁護士などで作る市民団体「裁判員ネット」は、モニターを募って実際に裁判員裁判を傍聴、判決内容を実際に検討する模擬評議を行っている。これまでモニターには裁判員経験者も参加したが、守秘義務の壁があり、経験を十分に伝えられないもどかしさも抱える。裁判員制度がスタートして21日で丸6年。制度の議論を深めるために守秘義務緩和を求める声は多い。

平成21年秋以降、実施回数が計31回の同ネット主催のモニター。今年3月に参加した14人は、東京地裁で覚醒剤密輸事件の裁判員裁判傍聴後、2グループで判決を検討した。

「被告に不自然な点があっても、違法薬物を密輸した認識はないのでは」「薬物撲滅キャンペーンに関わるなど、被告は薬物密輸の知識があったはず。有罪ではないのか」

意見が割れる模擬評議。実際の判決は有罪だったが、2グループの結論は有罪・無罪に分かれた。

終了後、参加者からは「自分と違う考え方の意見にも納得する部分があり、気持ちが揺らいだ」「どちらの意見も正しいように見えた」との声が上がり、判断の難しさをにじませる。

今回参加した古平衣美さん(42)は、22年6月、殺人未遂事件の公判で実際に裁判員を経験。「法律の知識がない自分が出した結論について、裁判が終わっても悩んだ」と振り返る。こうした経験から、「これから裁判員になる人には、気持ちの整理や客観視、自分の意見を言う力が必要だと感じた」と、モニターの意義を考える。

今月17日に行われた同ネット主催のイベントで、「裁判員を務めて犯罪を身近な問題として感じることができた。こうした感覚が経験者を通して広がることで、犯罪抑止につながるのではないか」と制度の意義を語った古平さん。ただ、経験共有には守秘義務という壁がある。

裁判員は、評議の内容など公開の法廷で明らかにならない部分で守秘義務を負い、違反すれば刑事罰を課せられる可能性がある。古平さんは「公判に参加し、評議を行った上で、今抱く経験者としての考えがあるが、守秘義務のために多くを伝えることができない」ともどかしさを感じる。

これまで日弁連などが守秘義務緩和を繰り返し求めているが、現在、国会で論議されている裁判員法改正案に緩和は盛り込まれていない。同ネット代表理事の大城聡弁護士は「裁判員の経験を共有することで、国民が主体的に参加する制度になる。守秘義務は貴重な経験共有の妨げになっている」としている。