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感染症対策は時間との闘い(3月2日)

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新型コロナウイルス対策では、時間との闘いとの中で迅速に意思決定して実行することが求められます。①感染症に関する医学的な知見、②経済的・社会的な影響、③法的・制度的な問題の3つの視点から、いま大切なこと、必要なことを考えます。

(この文章は2020年3月2日10時時点の情報に基づくものです。)

 1 <視点①>感染症に関する医学的な知見

新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針の具体化に向けた見解」(2020年2月24日付、以下「専門家会議見解」※1)を公表しています。この見解は、率直で、力強いメッセージがあります。国内の感染が急速に拡大しかねない状況にあると現状を評価した上で、「仮に感染の拡大が急速に進むと、患者数の爆発的な増加、医療従事者への感染リスクの増大、医療提供体制の破綻が起こりかねず、社会・経済活動の混乱なども深刻化する恐れがあります」として“最悪のシナリオ”にも言及しています。

そして、2月24日時点で、「これから1-2週間が急速な拡大に進むか、収束できるかの瀬戸際となります」と時間軸を示しました。

 

これから1-2週間が急速な拡大に進むか、収束できるかの瀬戸際となります。仮に感染の拡大が急速に進むと、患者数の爆発的な増加、医療従事者への感染リスクの増大、医療提供体制の破綻が起こりかねず、社会・経済活動の混乱なども深刻化する恐れがあります。

(「専門家会議見解」より引用)

 

2 <視点②>経済的・社会的な影響

専門家会議見解を受けて、翌日に政府が基本方針をどのように示すかが注目されましたが、強いメッセージと明確な基準は示されませんでした。※2 その後、政府は、五月雨式に、全国規模のイベントの自粛要請、確定申告の期限延期、全国の公立小中高校の臨時休校に関する要請などの施策を発表しています。

感染拡大防止のための施策は、人と人との接触機会を減らすものですから、経済的にはマイナスであり、実施方法を間違えれば社会的な混乱を引き起こすおそれもあります。

政府は、基本方針において「経済・社会へのインパクトを最小限にとどめる」としてます。現時点での政府の経済面での対策は、「新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策」です。※3 政府は、5,000床を超える病床の確保や必要な設備整備等の医療提供体制の構築も含め、10日程度で第二弾の対応策を取りまとめるとしています。※4

 

 3 <視点③>法的・制度的な問題

現時点での政府の新型コロナウイルス対策は法的・制度的には大きな変更を伴わない形で進められています。

新型インフルエンザに関しては「新型インフルエンザ等特別措置法」があり、「緊急事態宣言」を行い、強力な対応策を行うことができます。この法律に基づく「新型インフルエンザ等対策政府行動計画」をみると、法的・制度的な問題も含めて、感染症対策の課題が俯瞰できます。※5 感染症対策という観点からは共通点も多くとても参考になります。新型インフルエンザ等特別措置法を直接適用するかどうかは別として、法的・制度的な問題が生じた際に解決の糸口になるものと思われます。

北海道知事の「緊急事態宣言」は、新型インフルエンザなど特別措置法によるものではなく、法的拘束力はありませんが、外出自粛要請など強いメッセージを市民に届けるものでした。現行法でもできることが多くあることを示しています。

4 いま大切なこと、必要なこと

専門家会議見解は、2月24日時点で「この1~2週間」が「瀬戸際」と明言しています。それから1週間経過しました。この間、政府対応策や私たち市民がそれぞれできることを十分にしてきたかを、改めて問わなければなりません。

 

この1~2週間の動向が、国内で急速に感染が拡大するかどうかの瀬戸際であると考えています。そのため、我々市民がそれぞれできることを実践していかねばなりません。

(「専門家会議見解」より引用)

 

感染拡大の防止は、時間との闘いです。迅速な意思決定と実行が何より重要です。

“最悪のシナリオ”に言及している専門家会議見解を正面から受け止めるのであれば、政府が「緊急事態宣言」を出して、外出自粛要請など現行法できる範囲の強いメッセージを出し、同時に経済的・社会的な影響を緩和する対策をパッケージで示すべきです。「瀬戸際」を過ぎてから、感染拡大が急速に進んだ後に「緊急事態宣言」を出しても遅いのです。

最悪のシナリオが現実とならないために、私たちは、一人ひとりができることを実践するのと合わせて、主権者として適切な施策を迅速に実行するように政府に対して求めていくという役割を担っているのだと思います。

 

以上

※1 新型コロナウイルス感染症対策の基本方針の具体化に向けた見解

※2 新型コロナウイルス感染症対策の基本方針

※3 新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策

※4 新型コロナウイルス感染症対策本部(第16回)

※5 新型インフルエンザ等対策政府行動計画

 

 

 

<2020年3月2日 「弁護士大城聡のページ」から転載>