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長崎新聞「対馬父娘殺害 あすから長期審理」(1月22日)

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<2018年1月22日 長崎新聞より>

2016年に対馬市で父娘が殺害され自宅が放火された事件で、殺人などの罪に問われた対馬市美津島町、自営業の男(39)の裁判員裁判が23日、長崎地裁で始まる。3月27日に予定される判決まで22回開かれる予定で、長崎県内の裁判員裁判では最多となる見込み。長期の審理は裁判員に重い負担がのしかかる。専門家からは「裁判員に企業から特別休暇を」「心理ケアの充実を」と対策を求める声が上がる。

弁護人や捜査関係者によると、被告は否認を続けている。殺人や放火事件と被告を直接結び付ける目撃証言はなく、凶器も見つかっていない。弁護側は無罪を主張する方針だ。

一橋大大学院の本庄武教授(刑事法)は結審までに35回開かれた首都圏連続不審死事件などを挙げ「直接証拠がなければ、多くの状況証拠で『犯人はこの人以外にあり得ない』と立証しなければならない。審理が長引くのはやむを得ない」と説明する。

しかし市民にとって長期審理の負担は重い。長崎地裁で今月、開催された裁判員経験者の意見交換会。7人の裁判員経験者に「対馬事件など20回以上の裁判で裁判員になれるか」と問うと、意見は分かれた。「参加したい」「参加できない」が各3人で「分からない」が1人。参加できない、もしくはためらう理由として「同僚に負担をかける」「サラリーマンには厳しい」と仕事上の問題を挙げる人が多かった。

最高裁によると、これまでの裁判員裁判で開廷回数の最多は42回。最高裁のアンケートによると、3回までなら参加できると答えた人は75%いるが、15回以上では7%に激減する。

一般社団法人「裁判員ネット」(東京)代表で弁護士の大城聡氏は「難しく重大な事案こそ市民が参加すべき」と主張する。ただし現状では、有給休暇を使っている裁判員もいるとして「裁判員には企業が特別休暇を用意すべきだ。裁判員を社会や企業が支える仕組み作りが必要」と語る。

長期の審理は、審理が複雑で量刑などの判断が難しく心の負担も重くなるとして「臨床心理士が裁判所に待機する態勢が望ましい」と対策の必要性を語る。

一方、本庄教授は、会社員や自営業者の辞退率が高まり高齢者や主婦、学生などの比率が高まる可能性を指摘するが、「それで裁判の公正さが失われる訳ではない」と見解を示す。

長期審理では多数の証拠が提出され審理が複雑になるため「一般人が理解しきれきない懸念はある。検察官はそれぞれの証拠の関係性を分かりやすく説明する必要がある」としている。